- 私たち日本人の日常に欠かせない襖(ふすま)。
でもここ十数年、生活の洋風化によってその利用が減少してきました。ふすま紙についても、比較的安価な商品にその需要が移って、ふすまのある生活に工夫が凝らされなくなったと云われます。
その理由は「ふすまを知らない世代」が増えて、ふすまについての知識や知恵が人々に共有されなくなっていることがあげられます。
そこで今回はふすま紙の意匠・・「襖面(ふすまおもて)を飾る加飾和紙」について、解説いたしましょう。
- 「襖紙の商品数」を推計すると・・4000点以上になります
- 平成22年10月の「壁装新聞」に掲載されたアンケート報告によると、襖紙の見本帳発行事業者数は37社。発行されている見本帳の種類は全135種です。
この記事では「ふすま紙」の商品点数は示されていませんが、昨年発行された見本帳7種の平均掲載点数(32.8点)を参考に、いま市場に流通している襖紙の種類を推定すると、約4,000点以上となります(平均30点が掲載されていると仮定し試算)。
これほど多くの襖紙商品が流通しているとは! 一般の生活者のみならず内装設計スタッフにとっても、ちょっと驚きではないでしょうか?
- なぜこんなに多種類あるの?
- ふすまという和の仕切りは、日本で生まれ育った文化です。その発生は、千年ほどさかのぼる平安のころ・・といわれます。
建築技法の推移や内装の工夫により、様々な意匠が生み出され、現在に至りました。その蓄積の中で「襖面(ふすまおもて)」を彩る意匠の工夫も多様に展開し、和の意匠文化を形成しています。
たとえば・・
1) 和紙の多様性/表情の工夫
襖戸は、板のままの戸などもありますが、ほとんどは和紙が貼られています。
この襖面の和紙・・ふすま紙に絞って見てみましても、様々な種類の紙が使われます。つまり、紙・・和紙の漉きかたを工夫して、ふすまの意匠を様々に創造しています。
和紙漉きには、おおきく分けて「機械で漉くエコノミーな素材」と「手漉き工による和紙の風合いを生かした素材」とがあります。この和紙を漉く段階で「色付けをする製法」「模様になる材料を漉きこむ漉き入れ和紙」「表面に繊維を漉き入れた織物紙」など・・様々な技法が加えられます。和紙自体にふすま紙としての表情が凝らされます。
また和紙作家に依頼して、一点モノの和紙を設えることもおこなわれています。
2) 加飾技法の多様性/装飾技術による工夫
漉きあげられた和紙(襖紙素材紙)の表面に、別項「和の意匠用語 《ひとこと解説》集」に掲げる多様な加工法で、様々な加飾が施されます。これら加飾法には「普及品用の機械刷り」から「手加工による加飾」「手描き」などがあり、ときにはこれらを組み合わせて、様々な襖紙の意匠を造ります。
3) 図柄/メッセージ性の工夫
襖紙素材紙に各種加飾技法を駆使して表現する「図柄」についても多様です。
つまりこの図柄についてはアイデア次第。幾何学的な模様から、小紋のようにデザイン化された文様、花鳥風月や風景などの絵画表現。金箔・銀箔を蒔いたり光沢のある雲母粉(キラ)を入れた顔料を使ったりしてつくる抽象的な図柄表現も、おこなわれます。
図柄をつける場所(部分)については、襖戸全体につける総模様や、裾模様・袖模様・帯模様など、住空間を演出するために様々なパターンが工夫されてきました。
寺院などでは、むかしから画家や書家に襖戸の制作を依頼してきました。このようなオーダーメイド図柄については、いまはだれでもオーダーメイドが可能だといえるでしょう。
4) 施工職人の工夫/遊び心
手に入るふすま紙が数千種あるため、これらを組み合わせて、独特の意匠空間をつくることが可能です。
つまり、様々な襖紙を組み合わせて貼るテクニックを、経師・表具師はもっています。「細工貼り」といわれる襖の意匠です。他にはない独特の雰囲気を作りたい・・という施主に対して、ご満足いただける施工法だと考えます。
このように、幾つもの要素を組み合わせて創られるふすま紙の意匠は、無限の可能性を持ちます。したがってふすまは、お客様の求めに応じて多様なデザインが生み出されてきました。
「和紙生産の段階で商品が出来上がるふすま紙」、「加工事業者(加飾職人)の手を加えて出来上がるふすま紙」、「加飾の段階にデザイナー・絵師から図柄が提供されているもの」、「表装の段階で意匠を凝らすもの」・・どれも「ふすまの意匠」として育まれてきた「和の設え」です。
- お客様に育まれてきた和の意匠(現状の課題)
- このようなふすま紙の意匠の多様性。それは、襖紙の生産者・・職人だけで作り上げてきたものではありません。「毎日の生活に欠かせない住空間」、「寺院などの公的場所での装飾機能の配慮」、「茶室などにおける創意工夫の表現媒体としての空間利用」。こうした「場」へのクリエィティブな嗜好性を追及する施主(使用者)の工夫と意向が反映されてこそ、多様な意匠が生み出され蓄積されてきたのだといえるでしょう。
つまりユーザーの意思が反映されながら、その時代々々のデザインが生まれてきました。
残念ながら昨今の住宅・内装発注の現場では、ふすまの意匠について施主や購入者(生活者)からの直接的な要望が出されにくくなりました。襖紙見本帳の数やふすま紙の種類についても、その多様さを知らせないままに限られた範囲から、襖紙の選択を強いているのが実情です。
もちろん、全襖紙商品からふすまの意匠を自由に選択していただくとなると「個人の好みの問題であるためなかなか決まらない」とか、「取り扱っていない商品が発注される」とか。・・つまり受注業者側からすると、効率の悪い取引になりかねません。したがってお取り寄せ商品である襖紙の流通には、まだまだ商品選択のための手段開発に課題が残っています。
でも多品種少量生産で、本来は嗜好性の高い商品のはず。お客様に満足いただける商品提示方法を工夫する必要はあるようです。
たとえば、お客様がお望みの意匠についてお聞きし、その意向に沿った襖紙のご提案ができるようにしていくことなども、これからのインテリア業界の課題ではないでしょうか。
- 襖戸から飛び出せ!これからの「加飾和紙」の進路
- 普通の和紙とは異なり、ふすま紙は次のような特色を持っています。これら襖紙特有の商品特性をご理解いただくことによって、もっと加飾和紙の活用を促進したいと考えています。
つまりこれらを充分ご理解いただければ、襖紙・・加飾和紙は「襖戸」に貼るだけでなく、工夫次第で新たな和のインテリアとしての応用領域が拓かれます。また和の意匠をアピールする新製品の開発にもつながるのではないでしょうか。
(1) ふすま紙は「縦:約180cm」×「幅:約90cm」と、比較的大きなサイズ。その面に多様な加飾が施されます。つまり、そのサイズ以内ならば、小ロットでも意匠を加飾加工することができます。
(2) ふすま紙は、紙や木材の上に貼って使うために作られた製品です。水性糊(アレルギーなどの発生しない天然素材糊)で貼り付けることができます。そのため、表面のデザイン紙の裏には糊付け用の紙が裏打ちされています。(張った場所の下の汚れが表面まで滲んできにくい重層構造になっています)
(3) 貼る場所に、袋張りなどの工夫をすることによって、容易に張替えができるようになります(「本襖」仕様)。・・なおふすま紙については(その素材にもよりますが)、3~10年で張り替えることを業界は推奨しています。色合いが経年変化をおこすためです。
(4) 建具・仕切りとして使われる製品ですから、比較的丈夫な素材としてつくられています。
(5) 表面に繊維織物を漉き込んだ織物紙のような特殊な素材もあります。
(6) 紙製品は可燃性です。使う場所について、消防法の問題が発生しないかを確認していただく必要があります。
これまでの襖紙加工(加飾)受注は、ふすま紙ブランドメーカーからの小ロット発注の意匠制作・加工製造でした。これからは、襖紙以外のご注文についても、お請けいたします。お使いになる方のオリジナルデザインを加飾和紙に製作してお納めいたします。
襖意匠制作で培われてきたこの「和の意匠(デザイン)」の創造・開発。これからは、洋間にも、雑貨などの他製品にも、また海外市場むけにおいても、ご活用していただければ幸いと考えます。
ふすま紙加工事業者一同、試作品の開発を競演いたしましたので、ぜひ本ホームページのショーケース展示品をヒントにして、加飾和紙の活用についてご検討ください。
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文責:(有)サマーグラス
和の意匠の宝庫《襖紙》を
活用していただくための基礎解説